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NPO法人 PRENET21 経営戦略機構

~ 人そして再生 ~

「CLマネジメント」の時代 その32

イノベーションと企業遺伝子(19)

「永続企業には業績の踊り場がある」
~停滞時期こそ遺伝子組み換えとイノベーションを起こすチャンス~

 「企業が成長する為には一定の時間が必要である」と吉村氏。そしてその期間には必ず業績が停滞したり低下する「踊り場」がある。この踊り場の期間に遺伝子の組み換えを行い、組織や事業の変革を起こせた企業が成長発展していることがわかった。逆にその時期にイノベーションを起こせなかった企業は淘汰され消えてしまうことになる。



yosimura.jpg瀬本  企業遺伝子とは人によって創られ継承され、意思決定や商品化などの
     企業行動に影響を与える企業独自の傾向性であると考えています。
     吉村さんが行ったアンケートの中で老舗企業の経営者が自社の遺伝子を
     「創業の地」や「商品」であると答えていましたが、それらは遺伝子に
     影響を与える「きっかけ」や「縁」、もしくは「結果」であり、企業遺伝子とは
     言えないのではないかと思います。

吉村  確かに「継承するもの」という視点から商品や創業の地が企業遺伝子で
     あると答えられたのではないかと思います。おっしゃるように企業遺伝子とは
     人によって生み出され継承される企業の傾向性です。私はこの1年間
     「遺伝子経営と時間軸」について研究してきました。そこでわかったことは
     「企業の成長には一定の時間が必要である」ということです。
     そして長く続いている企業には必ず「業績の踊り場」がありました。


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瀬本   「業績の踊り場」とは業績が停滞している時期ということですね。
     確かにどの企業においても業績が伸び悩んだり、低下する時期があります。
     永遠に右上がりの成長をしている企業は存在しません。
     急激に伸びた企業は急激に凋落する場合が多いのも事実です。

吉村   私はその時期に遺伝子の組み換えが起こっているのではないかと考えています。

瀬本   人間の成長を考えても幼年期から青年期にかけて体の成長が著しく伸びる
     時期がありますが、それだけでは一人前の人間にはなれない。
     必ず思考をし、哲学に触れる時、すなわち体と心のバランスをとるべき時期が
     必要です。

吉村  停滞期こそ企業の方向性や戦略の見直しを行う必要があり、その為には組織や人の見直しや検証、
     すなわち組織イノベーションを起こすことが不可欠だと思います。それが事業革新に繋がり、次の発展の土台になるのです。
     人間は年をとっていずれは死を迎えますが、企業は永続することを目指しているわけですから変化する事業環境に
     対応する為にも遺伝子の組み換えが必要な時期が必要です。

瀬本  踊り場の時期こそ企業の成長にとって大事な時期であるということですね。
     中小企業が大企業に発展する時期には外部から優秀な人材を招く時期があります。
     それまで会社の成長に貢献してきた人材でも会社が求めるレベルについて行けずにリタイアせざるを得ないこともある。
     業績の踊り場を低迷している期間とマイナスに捉えるのではなく自社の遺伝子を見つめなおし、
     場合によっては組み換え、それに対応する「人」を育成する期間と捉えるべきなのでしょうね。

吉村  創業10年で90%の会社が消えているのが実態です。それは踊り場の期間にイノベーションを起こせなかった
     企業がほとんどであったということを意味します。
     次のステージに上れるか否かは踊り場でのイノベーション行動次第だと言えるのではないでしょうか。

瀬本  現在の経済スピードは激しく、昔のようにゆっくりと時間をかけて改革を進めることはできません。
     踊り場期に入ったならば瞬時に自社遺伝子の見直しを行い、組織イノベーション、
     そしてビジネスモデルの変革を行う必要があります。その意味では変革行動のスピードが求められるようになりました。
     その為にも富士通のように普段から自社の企業遺伝子とは何かを検証・明確化し、
     行動基準にまで昇華させておく必要があるのではないでしょうか。
     そして踊り場期に入ったならばすぐにそれを見直す作業に入れるようにしておくことが重要です。
     そして検証作業は第三者を介する必要がある。
     なぜなら自社の遺伝子は自社ではわからないからです。


吉村 孝司(ヨシムラ コウジ)
 1960年生まれ。明治大学専門職大学院教授。経営学博士。
 明治大学大学院経営学研究科博士後期課程修了。
 新潟産業大学経済学部教授を経て現職。

企業イノベーションの研究を進める中で、経営の実行主体としての人間の諸行動に着目。
なかでも意思決定行動を人間の脳機能との関連で解明しようとする「ニューロエコノミクス(神経経済学)」に基づく「ニューロマネジメント」を提唱し、研究を進める。特に「企業遺伝子」の存在を初めて実証したこの分野の第一人者。
著書に「企業イノベーションマネジメント(中央経済社)」「マネジメント・ベーシックス(編著・同文館出版)」他多数。

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2016/10
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